コラム

  1. 健診センター売上増加のための人間ドックの集客

健診センター売上増加のための人間ドックの集客

はじめに

健診センターの売上を増やすためには、「受診者数を増やす」か「受診者単価を上げる」またはその両方に関する対策が必要となります

今回は、「受診者数を増やす」ための対策として、健康診断・人間ドックの集客について検討します。 (医療機関である健診センターの「受診者」に対して「集客」という言葉が適切かどうか、悩むところではありますが、便宜上ここでは「集客」という言葉を使うことにします。)

全国の健診センターで、さまざまな健康診断を実施されていますが、受診者単価の高い人間ドックの売上状況は、実施している健診センターにとっては経営を大きく左右します。

そこで今回はターゲット市場が人間ドックである場合の集客手法について検討します。

Ⅰ.人間ドック集客のための営業・プロモーション手法

1.人間ドックの集客には2方面のアプローチが必要

健康診断の集客手法に関しての特殊性は、健康診断の種類によって、実施主体(契約主体)と実際に健康診断をどの施設で受診するかを決める個人といった2方面への営業・プロモーションのアプローチが必要になってくるところです。

たとえば、人間ドックの集客を考える場合、下記のとおり、人間ドックの費用補助をする保険者(健康保険組合など)へのアプローチ、実際に健診センターを利用する個人(被保険者、配偶者、家族など)へのアプローチが必要になります。(場合によっては企業の健診担当者へのアプローチも必要で、3方面となる場合もあります。)

<主な健康診断の種類と実施主体・健診決定者>

◆人間ドック(日帰り・宿泊人間ドック、脳ドックなど)

 実施主体(契約主体) → 保険者(健康保険組合や共済組合など)

 受診する施設の決定者 → 個人(被保険者、配偶者、家族など)

◆協会けんぽ生活習慣病健診 

 実施主体(契約主体) → 保険者(協会けんぽ)

 受診する施設の決定者 → 事業者または個人(被保険者、配偶者、家族など)

◆一般健康診断・特殊健康診断

 実施主体(契約主体) → 事業者(企業の人事・総務担当者など)

 受診する施設の決定者 → 事業者(企業の人事・総務担当者など)

◆特定健康診査

 実施主体(契約主体) → 保険者(健康保険組合や共済組合など)

 受診する施設の決定者 → 個人(被保険者、配偶者、家族など)

◆がん検診などの住民健診

 実施主体(契約主体) → 各市町村等自治体(国民健康保険等)

 受診する施設の決定者 → 個人(被保険者、配偶者、家族など)

2.人間ドック補助契約に関する渉外活動(営業)が重要

人間ドックの集客においてまず必要なのが、保険者(健康保険組合や共済組合など)に対する渉外活動(営業)です。

人間ドックは、保険者が被保険者や配偶者・家族などに対して、保険者の設定した条件で補助を出す、予防医療に関する事業として実施されているケースが多いです。

補助割合や受診の条件は保険者によって様々ですが、被保険者や配偶者、家族など、実際に人間ドックを受診する方は、この保険者の補助制度を利用して受診する場合がほとんどではないでしょうか。

そこで、人間ドックの補助を出している保険者に、自施設が補助を受けられる施設として契約をしてもらう必要があります。

(逆に、人間ドックの補助に関する契約がない健診センターで被保険者が人間ドックを受診した場合、補助が出ない場合があります)

3.おもな人間ドック補助に関する契約の方法

1)保険者への契約の直接交渉

保険者(健康保険組合や共済組合など)へ直接お伺いして渉外活動を実施し、契約をしていただくという手法です。

最近は健診代行機関を利用される保険者が多くなっていますが、自施設を利用する可能性のある企業や被保険者などが加入している保険者によっては、健診代行機関を利用されていないケースもありますので、その場合には保険者との契約が必要です。

2)健診代行機関との契約・提携

最近は、保険者が健診の代行機関を通して人間ドックや健康診断の契約や健康診断の結果処理、精算業務を委託されていることが多くなっています。 健診代行機関は多くありますので、複数の健診代行機関との契約・提携をすすめることで、保険者との直接的な契約がなくても、さまざまな健康保険に加入している人間ドック受診対象者が人間ドックの補助を受けられる施設になることができます。

<主な健診代行機関>

筆者が健診センターの事務責任者だったときに提携していた健診代行機関は以下のような企業です。

イーウェル

ウェルネス・コミュニケーションズ

バリューHR

ベネフィットワン

ウィーメックス(旧LSIメディエンス)

など

提携にあたっての注意点としては、それぞれの健診代行機関によって、システムや事務処理の方法に違いがあるので、受付事務職員の手間が増え、予約業務の効率が落ちる場合があります。

施設内でどのくらいの健診代行機関と契約するのかなど十分検討して提携されるといいでしょう。

4.健診センター利用決定プロセスと潜在受診者へのアプローチ

ここからは、人間ドックを実際に利用される方へのプロモーション施策を検討します。

どの健診センターを受診するかを決め、受診されるのは個人(被保険者・配偶者・家族など)です。 個人に健診センターの営業担当の方が直接訪問営業することは、ほぼ不可能ですので、プロモーション施策(広告・広報など)が中心となります。

健診センター利用決定プロセスの段階毎のプロモーション手法

いわゆる購買意志決定プロセス(AIDMA、AISASなど)を健診センター向けにシンプルに整理することで、健診センターのプロモーション施策の優先度をつけることができます。

健診センターにおける人間ドックの潜在顧客(受診者)の受診までのプロセスは以下の通りです。受診後のプロセスもありますが、単純化するため今回は利用するまでのプロセスにしています。

<潜在受診者の健診センター利用決定プロセス>

①自施設を知らない → ②自施設を知る → ③競合施設と比べる → ④自施設に決める → ⑤予約する → ⑥受診する

健診センターのターゲット受診者が、現在健診センター利用決定プロセスにおいて、どこの段階にいる人が多いのか分析した上でプロモーション手法に関して優先順位をつけて実施します。

たとえば、健診センターの新規開業やリニューアル時点など、まだ認知度が低いと判断された場合は認知度向上の施策が優先的になります。 ターゲット受診者の利用決定プロセスの段階と自施設の課題を検討した上で、どのようなマーケティング手法を優先的に実施するのか順番を決めて、マーケティング施策を実施していくといいでしょう。

<健診センター利用決定プロセスの段階とマーケティング手法>

①自施設を知らない 

 マーケティング目標:自施設を知ってもらう

 マーケティング手法:マス広告、看板広告、パンフレット等広告物制作、ホームページ、Web広告等

 自施設を認知してもらうことを目的としてマーケティング施策を実施します。

②自施設を知る・③競合施設と比べる・④自施設に決める 

 マーケティング目標:自施設の特徴や強みを知ってもらう

 マーケティング手法:マス広告、看板広告、パンフレット等広告物制作、ホームページ、Web広告等

 認知はしている潜在受診者へ自施設の特徴や強みを知ってもらうことを目標に、ホームページの改善 やWeb広告などの施策を実施します。

 ここで注意するポイントは、同じプロモーション手法でも、認知段階かそれ以降の段階かで、伝える訴求内容などは変わることです。

⑤予約する・⑥利用する

 マーケティング目標:予約が取りやすい仕組みの構築し予約を増やす

 マーケティング手法:Web予約、Web問診などネットの利用および予約

 最近はWeb予約が多くなっていますので、Web予約での予約のとりやすさ(画面のみやすさや受診者の入力作業を軽減した予約システムの作り込む)は、見落とされがちですが、非常に重要です。

Ⅱ.人間ドック集客のための主なプロモーション施策

1.保険者(健康保険組合)などの人間ドック受診機関一覧への掲載

保険者または健診代行機関との契約・提携をすると、そのホームページや被保険者向けの紙媒体での人間ドックの補助が出る健診機関一覧などに自施設の情報が掲載されます。

個人の方は、どこの健診機関(健診センター)で人間ドックを受診すると補助が出るのかをこれらの情報で確認することになります。

人間ドックについては個人へのアプローチ手法が少ないため、健診施設受診一覧などに健診センターの情報を記載してもらうことが自施設の認知にもつながります。 このことからも保険者や健診代行機関との契約・提携が重要になります。

2.マス広告など

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などに健診センターの広告を掲載します。

テレビについては、筆者が健診センターの事務責任者をしていた時に実施したことがあります。かなりの反応はあるのですが、広告費用も(かなり)高いので、高級な人間ドックを実施する場合以外はあまりおすすめできません。

新聞広告や新聞折り込み広告や雑誌(地域誌含む)などへの広告掲載は、健診センターを新規開業する場合や健診センターの周辺環境で住居が多くそのエリアからの人間ドック受診が見込める場合などは予算の範囲内で実施を検討するといいでしょう。 (チラシなどのポスティングについても同様です)

3.看板広告

最寄りの駅の駅看板広告や健診センター周辺での受診者の施設への案内などの目的で看板広告を掲載します。

駅から施設までの通り道に案内板的に広告を配置することで、利用者の案内だけでなく、地域住民に対する認知度が上がることも見込めるので、人間ドックだけでなく住民健診も実施している場合は検討したほうがいいでしょう。

4.人間ドック集客のためのWebマーケティング

人間ドックを受診する個人の方(潜在顧客)へのアプローチについて主力となるのは、Webマーケティングになります。(ここではマーケティングの重要な要素である「プロモーション(コミュニケーション)」の施策で、インターネット等を利用して実施することをWebマーケティングとしています。)

主なWebマーケティングの手法としては、SEO対策など費用がかからないものと、リスティング広告など有料のものなどいろいろあります。

最近はこれらのWebマーケティングを中心とした集客活動が健診センターでもメインのものとなっています。

1)ホームページ(オフィシャルサイト)

健診センターの集客にとって必ず必要になるのがホームページです。

人間ドックの場合は、個人がホームページを閲覧し、施設を選ぶ確率が高いので、自施設の強み、特徴が伝わるホームページ作りが重要になります。

個人の方にとっては、詳細な検査内容や医療機器のスペックよりは、医師をはじめスタッフがどのような対応(検査の精度だけでなく接客面も)をしてくれそうなのか、健診センターの内外装、人間ドック受診後の食事内容など健診内容以外の情報についてもわかりやすく伝わる工夫が必要です。

また、人間ドックの予約を自施設のホームページで取る仕組みを導入することで、利便性を高めることも必要になります。

2)SEO対策

ほとんどすべての健診センターが自施設のホームページを制作・運営されていると思われますので、SEO(検索エンジン最適化)についても何らかの対策をされているでしょう。

自施設のホームページの検索結果が上位に掲載されるほど、集客効果は高まると考えられるので、対策が必要です。

以前はSEO対策としていろいろと検索結果を上位に上げるテクニックがあったようですが、最近では記載されているホームページのタイトルや文章を最適化するくらいで、あとは、わかりやすいページ構成や受診者にとって有用な情報の提供を増やしていくことが大切になっているようです。

3)MEO対策

MEO(マップエンジン最適化)はGoogle検索やGoogle Map検索での地図検索結果で自施設が上位に表示されるようにする対策です。

地域密着が基本であるクリニックなどでは必須の対策と言われていますが、健診センターでもMEO対策は必要でしょう。

MEOは「Googleマイビジネス」にアカウントをつくれば無料で利用できます。自施設の情報(所在地・電話番号・URLなど)を設定し、運用・管理します。

設定に関しては人間ドックの受診者にわかりやすいように記載し、写真などについてもイメージが掴みやすいものを投稿します。

また重要なのは、「口コミ」です。「口コミ」が多いと上位表示されやすくなるようです。

「口コミ」について大切なことは、自施設にたいする「口コミ」があった場合、丁寧に返信をすることです。しっかりMEOをされている健診センターを見ると、「口コミ」全てに返信をされています。

クレーム的な「口コミ」も出てくるとは思いますが、誠意をもって返信することで、自施設の信用を高めることも重要な対策になります。

4)リスティング広告

リスティング広告は、「Google広告」、「Yahoo広告」の検索連動型広告といわれている広告で、検索した人の検索キーワードに合わせて、広告が表示され、1クリックごとに広告主に課金される広告です。

現在健診センターを運営している施設が目的に合わせた広告運用としてリスティング広告を利用することで、ホームページ閲覧などの認知効果や予約など集客効果が期待できます。

また、健診センターを新規開業した施設で、ホームページも新規で制作した場合、SEO対策やMEO対策をしても、一定の期間は検索結果が上位に表示されません。

そこでリスティング広告を出稿すると、新規制作ページでも上位に表示されることになりますので、SEO対策・MEO対策をしながら、うまく利用するとよいでしょう。

リスティング広告の設定についてはGoogle広告、Yahoo広告ともにそれほど難しいものではありませんので、設定画面に従って設定してください。

ただし、検索・広告表示をされるためのキーワードの設定やクリックをしてもらうための広告文の設定については工夫が必要となります。

たとえば人間ドックであれば、「地域名 人間ドック」、「駅名 人間ドック」などのキーワード設定をしておくと、このキーワードを検索した人に広告が表示されて、クリックをすると自施設の設定したページが表示されます。

ただ、「地域名 人間ドック」といったキーワードは他の広告主(競合施設)も設定をすると思われます

キーワードの1クリックあたりの単価は入札のような仕組みで決まりますので、このような競合が多いキーワードについては単価が高くなる傾向にあります。

そこで費用を抑えた上で、効果の高そうな(クリックしてもらい、問い合わせや予約をしてもらう)キーワードを検討し設定することが必要になります。

リスティング広告については、運用を続け、広告効果等のデータを分析することで、どのようなキーワードや広告文がいいのか、広告運用のコツがわかって来ますので、自施設の予算と合わせて実施を検討してください。

5)外部ポータルサイトの利用

健康診断予約サイトを運営している会社があります。

健診センターが、その運営会社のポータルサイトに登録し、健診予約が入ると、運営会社に手数料を支払うというビジネスモデルが多いです。

最近は登録されている健診センターも多くなり、ポータルサイト自体の集客率も高くなっているので、健診の予約数が増える可能性は高いです。

費用対効果などを分析した上で利用を検討するといいでしょう。

おわりに

以上、健康診断・人間ドックの集客手法について簡単にまとめてみました。

健診センターを現在運営されている事務責任者や営業担当者の方にとっては目新しいものでは無いですが、集客に秘策はないと思います。(あるのかもしれませんが・・)

健診センターの集客は、自施設の状況に合わせて、あらゆる手法を実行することが必要です。

今後の健康診断・人間ドックの集客に関する方針や主なプロモーション手法について、要点を整理するための一助となれば幸いです。

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